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トミーウォーカーPBW「エンドブレイカー!」と、TeamChocolopPBW「バロックナイトイクリプス」のキャラブログです。
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―誕生日に両親がくれたのは、
イチゴの乗ったケーキでもなく、綺麗なお人形でもなく、
名も知らない異国への片道切符でした。


「……Es ist kalt」
(寒い)

それが、最初の感想。

10時間を越える長い空の旅の末。
私を待っていたのは、とてもとても寒い街だった。

十年以上前におじいちゃんとおばあちゃんが移り住んだ、東の果ての小さな島国。
ニホン、という名前しか知らない未知の大地。

文化も、常識も、習慣も、

「ようこそ日本へ。観光ですか?」

「……Wo sind die Großeltern?」
(お爺ちゃんとお婆ちゃんは何処?)

言葉なんて、分かるはずも無い。



――視線が痛い。

カラスみたいな真っ黒い髪をした人達が、真っ黒い瞳でこっちを見てくる。
真っ黒くて暗い色の中じゃ、私の髪と瞳は目立ちすぎた。

「……Sehen Sie nicht」
(じろじろ見ないで)

同じ言葉を使ってる人達の中で、
異なる言葉も、とても目立った。

「……Ach, es ist kalt」
(あぁ、寒い)

ドイツはとても暖かい国なのに、
この国は、とても寒くて冷たかった。
気候も、人の視線も。




「Entschuldigen Sie mich」
(あの、すみません)

「……お?おい見ろよ、ガイジンだ」

「すげぇ、頭金ぴかじゃねえか!!」

髪が目立つなら、目立つ人を選べばいいと思ったのだけど、
――私は、運も無かったのかもしれない。

「……Ich will hier gehen……」
(ここに行きたいんだけど……)

「何だ、日本語分かんねぇのか」

「ほら来いよ、日本なら案内してやるから」

「……っ!?」

ぐいっ

「Halten Sie es bitte an!Was machen Sie!?」
(やめて!何するの!?)

ばちんっ!!

「……ってえ、何しやがる!!」

「随分と威勢のいいガキだな、オイ!?」

「……っ!!」

――嫌だ。怖い、怖いこわいこわい。

「おいっ!?てめぇ、逃げんじゃねえ!!」

……この街は、寒くて冷たい。
気候も、視線も、人の心も。




「……Ich will zurückkommen」
(帰りたい)

そいつらは大して速くなかったから、荷物を持った私でも10分くらい走れば振り切れた。

――その分、身体は限界だった。
キャリーを引く腕が重く軋む。
必死になって走ったから、脚ががくがくと笑ってる。

「……Ich hasse es」
(だいっきらい)

どんよりと曇ってたから雨かと思ったけど、私の涙だった。

「……Ich hasse dieses Land……」
(こんな国、だいっきらい)

あぁ、寒い。冷たい。
こんな国も、あいつらも、お父さんもお母さんも、みんなだいっきら……、

「どうかなさいましたか?」

頬が、暖かくなった。

「涙は強さに繋がりますが、あまり人前で見せるものではありませんよ」

頬に当てられているのはハンカチのようだった。
髪は黒いけど、瞳の色は幾分か軽く、そして暖かかった。

上着の下に見えるのはパジャマだろうか。
街中でパジャマを着ているのはちょっとおかしいと思った。

「……Es ist seltsam」
(変なの)

涙はちょっと引っ込んだ。

「……それは、地図のようですね。道に迷ったのですか?」

その人の視線は、手に持ったおじいちゃんとおばあちゃんの家への地図へ向けられていた。
……この人なら、大丈夫だろうか。

「Ich will zu Großeltern gehen……」
(おじいちゃんとおばあちゃんの所に行きたい)

よく見えるように、地図を差し出した。

「これは……、英語、ではないようですね。ドイツ語でしょうか」

勿論、言葉なんて通じなかったけど、

「Werden Sie mich führen?」
(案内してくれるの?)

「少し遠いですが、歩いていける距離ですね」

柔らかい手が、私の手を包んだ。
ちょっとひんやりしていたけど、私の手はとても冷たかったから、

「どうしましたか?痛いところでも?」

その手は、とても暖かかった。




「Opa!Oma!」
(お爺ちゃん!お婆ちゃん!)

20分くらい歩いた所に、初めて見るおじいちゃんとおばあちゃんの家があった。
毎年家に来ては私を可愛がってくれていたから、顔はとてもよく知っていた。

お父さんとお母さんより、よっぽど親らしい人だった。

「随分遅かったねぇ、心配かけて……」

「Ich war wild……、Ich war einsam」
(怖かった……、寂しかった)

とっても暖かくて、引っ込んだはずの涙がまた出てきた。
その分、怖さも寂しさも吹き飛んでいたけど。

「お嬢さん……、ちょっと、どうしたんだい!?」

突然、おじいちゃんの叫び声が聞こえた。

――私の後ろには、さっきの人が倒れていた。

「Schwester!?」
(お姉ちゃん!?)

ああ、やっと分かった。
この人、病院から抜け出してきたんだ。

――なのに、あんな無茶を。

「Sind Sie in Ordnung!Schwester!!」
(しっかりして、お姉ちゃん!!)

涙が、ぼたぼたと頬を塗らした。

「……あぁ、気にしないでください。いつもの事ですから」

その言葉が、意味は分からなくてもとても静かで、
私はちょっと面食らってしまった。

「泣いているより、笑った方が可愛いと思いますよ」

目を覆ってしまいたくなるような、真っ青な顔だったのに、
頬に触れる手がとても暖かくて、その瞳の光がとても強くて、

「……Ich bin warm」
(暖かい)

思わず、変な顔になってしまった。



その人が、日本で初めて出来た友達。
私の、「お姉ちゃん」。








※裏話とか

作中の日本語訳で使っているのが、本来のリゼットの口調です。
乱暴ではあるけど女の子らしい口調かも。

この口調→レディース口調→ですますを混ぜて今の口調、みたいな感じ。

ドイツ語は翻訳サイトを使って調べたものです。
実際使うと色々おかしいと思うので、アテにしては駄目です(笑)。
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