しあわせ

……あれ？

……お母さん？
お父さんもいる……。

……あぁ、夢なのかな。

お父さんの顔も、お母さんの顔も、思い出せなくなってきちゃったから、
……夢でも、嬉しいな。

－－え、……誰も？誰もお母さんを助けてくれなかったの？

－－……人間じゃないよ、そんな奴ら。

－－でもね。一人だけいたの。
　　　お父さんたった一人が、母さんを助けてくれたの。

－－お母さん、お父さんの事好き？

－－勿論よ。二人の事も、だーい好きよ。

－－私も大好き！お母さんも、お父さんもラシェルも、だいだいだーいすき！

－－私も、……父さんと母さんとサーシャは、好き。だいすき。

－－ねぇ、お母さん。私たちも、お父さんみたいな人、見つけられるかな。

－－見つけなきゃダメよ。いつまでも、お母さん達が一緒じゃないんだから。

－－……やだな、お父さんとお母さんと、ラシェルと、ずっと一緒にいたい。

－－それでもね。みんな、いつか見つけなきゃいけないの。

－－だからね、お互いを信じあえる、大切な人を見つけてね……。






「……お母さんの夢、……久しぶりだな」

……お母さん、私、見つけたよ。
守りたい、大切なひと。

……でも、私……。
私、は……。

「……私じゃ、やっぱり駄目だったのかな……？」

悲しい時も、嬉しい時も泣けなくて。
いつも弱くて、役立たずで。

……こんな私じゃ……。

「……やだよぉ、……私、傷つけたくない。誰も傷つけたくない……」

鼻の奥がツンとする。
目がひりひりと痛む。

でも、涙は流れない。

「……私、どんどん嫌な子になっちゃうよ……」

誰かが傷付いたとしても、……私だけでいいの。
誰も、傷付けたくないの。

……私が傷付いて、誰かが笑えるなら、
……きっと、それが、しあわせだから。