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(※アンオフィシャル多いです)
ばさばさばさっ!!
「きゃっ……!?……あぁ、またやっちゃった……」
アクエリオの宿屋の一室。
綺麗な割に宿代が安い分、食事と掃除は任意の方式。
その日私は、たまたま妹より早く帰宅していて。
妹・ラシェルの部屋の、宿の壁一面を埋め尽くす本棚の掃除をしていたところだった。
「うぅ、もうすぐラシェルが帰ってきちゃうし……、どうしよう、これ」
叩きをかけ、埃を落とすだけでこの失敗。
要領の悪い自分に、ちょっと呆れてしまう。
「……あれ?」
頭から降り注いだ本の殆どは、新しくラシェルが買い集めた物ばかり。
古いと言っても、古本屋で手に入るような程度のばかりなのだけれど……。
「……これは……」
一冊は、表紙の上から紐で縫い閉じるという変わった製本をされた、古い古い書物。
私が生まれるずっと……。
いや、恐らく両親や、顔も知らない祖父母の生まれるずっとずっと前に書かれた物だろう。
元は鮮やかだったであろう表紙はすっかり色褪せ、紙はキツネ色に日焼けして、所々に染みがある。
もう一冊は、手書きの……恐らく日記。
筆跡からして、ラシェルのものではない。所々に焼け焦げた跡があるのを考えると、
……お母さんの日記。
「……ラシェルったら、いつの間にこんな物を……」
まず私は、お母さんの日記を手に取る。
不思議な事に、それは二種類の言語を使って書かれているようだった。
半ばからは、私も慣れ親しんだ言語。
前半は……、まるで見たことのない言語。
その日記の記し方も不思議だったのに、
私がその見たことのない言語を読めたのは、もっと不思議だと今では思う。
--アマツカグラ。
--神楽巫女。
--神を裏切り、鬼に魂を売り渡した巫女。
--天津千歳。
「……アマツカグラ」
私は今までずっと気になっていた。
黒い髪に黒い瞳。私と、幼い頃のラシェルの持っていた色。
どちらか片方なら見かけはするけれど、どちらも黒というのはあまり見かけない。
……華やかな色に憧れる私としては、実は、ちょっとだけコンプレックスだった。
そして、その黒髪黒眼の人達の多くは、その出身をこう語っていた。
--アマツカグラ、と。
私は慌てて、もう一冊の古い古い書物を手に取る。
--そこに書かれていたのは、奥義書。
アマツカグラにのみ存在するという、3種の職業の奥義についてだった。
--神楽巫女。
かつてお母さんが持っていた、神火を司る力。
「……きっと、もしかして」
私がお母さんの娘なら、この力……、役立てるのではないだろうか。
今まで以上に、もっともっと沢山の人を救えるのではないだろうか。
……もっともっと、認めてもらえるようになるのではないだろうか。
「……うん、決めた」
歌を力に出来なくなるのは、ちょっぴり寂しい。
でも、歌えなくなるわけじゃない。
……新しい力を手に入れよう。
強くなりたい。役に立ちたい。たくさんの人を救いたい。
でも、その前にちょっとだけ。
……思う存分歌ってくるのも、悪くない……よね。
「…………あ」
……本、片付けなきゃ……。
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ジョブチェンジ前のサーシャの様子。
変更後、後編掲載予定です。